剣道の構え方：難易度は高いが身につければ強い上段の構えと扱いこなす有名選手

あなたは剣道の構えはいくつあるかご存知でしょうか。すでに剣道をやっている人にとっては自明の事かもしれませんが、上段・中段・下段の3つの位置で構えを取ります。そして、多くの方はその中からどれか1つを選択して、それを基本として自分の剣道を組み叩ていきます。では、3つある気本の構えのうち「上段」の構えはいったいどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回は「上段」の構えについてフォーカスをあてて、紹介をしていきたいと思います。

構え方

先ずは「上段」の構えについておさらいをしていきましょう。構えとしては中段の構えから左足を前に出し竹刀を振り上げた状態で自分から見てやや右に傾けます。基本的には上からの動きになるため、主軸として使うのは左手ですが、右手も片手技などで利用するため、キチンと握っておくこと、また腕を大きく振り上げる事によって下半身が浮かないようにすることなどがあげられます。相手に与える威圧が強い分、スキもできやすくなる構えですので比較的上級者の扱う構えと言えるでしょう。

上段の構えを取る事のメリット

相手の攻め方が分かる

これは上段の構えを常に取っている人というよりはむしろそれ以外の人とっても役に立つ事ですが、あまり今の剣道界において主流ではない「上段」の構えを練習しておくことで「上段」の構えをとって戦う相手に対戦した時にどんな攻め手で攻めてくるのか予測をする事が出来ます。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ですね。

圧倒的な威圧感

やはり独特な上から見下すような構えはそれだけで威圧感を与える事が出来ます。また、相手としても見慣れない構えになりますので無意識に緊張を誘う事が可能です。

技の数々

それでは上段の構えならではの技にはどんなものがあるのでしょうか。ここからは上段ならではの技を紹介していきます。

片手面

当たり前ですがモノは上から下に落ちる方が重力が働くためにより強く速く落ちます。その点、上段の構えは上に構えている状態から技を繰り出すため、この面は上段の構えの真骨頂と言えるでしょう。

諸手小手・片手小手

面と同じく上段の構えであるからこそより活きてくる技が「諸手小手・片手小手」です。面を打つと見せかけて手元が上がったところを思い切り振りぬく事で技が決まります。片手の方がコントロールがつけにくいため難易度は高いですが、両方出来るようになってくると非常に便利です。

逆胴

上段の構えは基本的に上からの攻撃が圧倒的に多くなります。するとそれを防ごうと相手は必然的に手元が上がりやすくなります。そして、その瞬間胴ががら空きになるという事があります。その一瞬のスキをついて胴を繰り出すという技も身につけておくと攻撃のパターンが広がり勝利をグッと手繰り寄せる事が出来ます。一瞬の判断が必要になるため、決して簡単ではありませんが、これが出来るかどうかで全然技のバリエーションが違います。

ここまで3つの技を紹介しました。基本的な上からの攻撃というベースに加えてそれを防ごうと出来た相手のスキに付け入る技を用意しておくことで攻撃のバリエーションがグンと上がります。1つ1つの技は難易度も高く習得するには時間はかかりますが、絶対に組み合わせる事で相手を翻弄出来るので「上段」の構えでいくと決めた方は鍛錬をしていく事をオススメします。

「上段」の構えの達人

では最後に「上段」の構えを使いこなす剣士を紹介していきます。

千葉仁

上段の構えと聞いてまず思い浮かぶのはこの千葉氏です。すでに現役は引退されていますが、これまでに全日本剣道選手権大会で3度優勝、世界剣道選手権大会で2度優勝、全国警察剣道大会で4度優勝という圧倒的な成果を残しています。段位も8段を取得されており、実力と権威のいずれも兼ね備えた上段の構えを取る剣士のあこがれの存在です。

正代賢司

正代賢司選手の名前を聞いた事がある人も多いのではないでしょうか。元神奈川県警所属の選手で、やはり上段の構えを武器として実に上段の構えを取る選手としては25年ぶりに全日本剣道選手権大会を制しました。足を使った剣道が信条であまりの速さに彼の繰り出す片手面は「電光石火」と恐れられたほどです。これまでに全日本剣道選手権大会で1度優勝、全国警察剣道大会で3度優勝・4度準優勝、世界剣道選手権大会で2度優勝とこれまた華々しい記録を打ち立てています。

最後に

いかがでしたでしょうか。上段の構えは決して主流の構えとは言えないかもしれませんが、れっきとした武器の1つです。ただし、上段・中段のいずれを選択するにしても厳しい稽古と精神的な成長がなければ強くなれる事はありませんので、目先の事だけを考えるのではなくある意味生き方を選択するかのように上段の構えを選択したのであればそこで一生を終えるくらいの覚悟で鍛錬に励みましょう。